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2013年01月23日

沖縄の建築事情

JIA MAGAZINE 277(2012年2月発行)寄稿 

若輩者の私が“沖縄の建築事情”を語るのは恐縮ですが、日ごろから業務として感じて経験していることを沖縄の建築事情のひとつとしてお伝えします。この業界に身を置き17年、事務所を設立して今年で10年目を迎え、主に新築住宅の設計を手掛けておりますが、最近の建築事情について書きたいと思います。

■建物の主流は鉄筋コンクリート構造

沖縄は亜熱帯地域に属し、これまで気候や歴史に沿って独自の建物形態が発展してきました。沖縄でみられる建物のほとんどが鉄筋コンクリート構造です。それは、高温多湿、強い日差し、毎年襲う強烈な台風、シロアリ被害など、厳しい条件下に耐えられる構造体であり、米軍統治下の歴史的背景のもと米国の文化、技術の影響を受けて作られてきたと言われています。
鉄筋コンクリート造の住宅のことを沖縄の人は「コンクリート家(ヤーは家の意味)」と呼びかなり馴染みのあるものです。総務省の平成20年度の住宅土地統計調査からも沖縄の非木造の割合が95.1%(全国平均が41.1%)とかなり高く、沖縄にある木造住宅は5%弱しかありません。本土の沖縄民家に対してのイメージは木造赤瓦かもしれませんが、実際には木造の建物はかなり少ないことがわかります。私の事務所でも受注の95%が鉄筋コンクリート構造で、あとは鉄筋コンクリート構造をベースにした混構造となっています。
沖縄の建築事情
米軍基地内の住宅風景

■木造住宅の増加

それがここ2,3年県内の動きとして少し変化を感じるようになりました。それは施主と作り手(設計事務所、工務店、ハウスメーカー)を結ぶひとつのツールとなっている、県内2大新聞社が毎週発行している住宅関連系の情報誌面の中でも見られるのですが、掲載される広告やオープンハウスの呼びかけでも、以前はみられなかった木造の住宅が目立つようになりました。
実際の着工件数も調べてみますと、国土交通省の建設統計月報より平成20年、平成21年、平成22年の過去3年間、県内新築の着工件数は4668件、4781件、4848件とじわじわと伸びてきているのに対し、鉄筋コンクリート構造の占める割合が68.2%から67.0%、61.8%と6%落ち、反対に木造が4.3%から5.3%、7.5%へと3%ほど上昇しています(鉄骨造と鉄骨鉄筋コンクリート造はそれぞれ17%と0.5%で横ばい)
NPO蒸暑地域住まい研究会(有志により結成。地域の住文化と最先端技術の融合エコハウスとして宮古島で伝統木造赤瓦住宅の面白い試みが行われています)や県の古民家再生や活用の呼びかけの動きなどの影響が功を成し、伝統への回帰、自然回帰へと向かう木造もありますが、本土メーカー、ハウスメーカー主導の木造、伝統とは異なる本土型の木造の台頭も目立つようになりました。

■変わりつつある沖縄の住宅

木造と同じように増えているのが戦後コンクリート住宅とともに普及したCB造(補強コンクリートブロック造、ブロックヤー)ですが8.2%から10.8%、11.4%へと木造と同じ率の3%の増加です。3%は小さく感じますが、件数にすると150棟と結構な数値となります。
この傾向から推測できることがあるのですが、CB造も木造も共通して沖縄はマイナスのイメージ(台風に弱い、貧しい、暑い、寒いなど)の強いものでした。それが時代の流れと世代交代でプラスのイメージへと転化(木造はエコで環境にやさしい。CB造はオシャレなど)、そして求めやすい価格や技術向上、供給業者の進出と合致して増加傾向となっているのではないかと考えてられます。一過性のものなのか、今後も持続してゆくのか、その判断は難しいのですが、新しい民家の形として戦後発展してきた鉄筋コンクリート住宅(コンクリートヤー)。
新しい沖縄の住宅の形の模索はコンクリートによる表現の追求と同義だった時代によって、これまでの街並みが作られてきました。それもまた変わりつつあるのかもしれません。
沖縄の建築事情
コンクリート建築の街並み

追記:掲載後、東京の兼松紘一郎先生より沖縄の赤瓦は戦後産業復興のため普及されたものとご教示頂きました。素敵な本も頂きありがとうございました。


    


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Posted by IKUYO NAKAMA ARCHITECT & ASSOCIATES at 11:45 │コラム/column